EMC〜電磁両立性とは

電車やバスに乗ると「携帯電話の使用は御遠慮下さい」という表示をよく目にします.
なぜ,電車やバスの車内で携帯電話を使ってはいけないのでしょうか?

まず第一にマナーの問題があるでしょう.
電話をしている時は知らず知らずのうちに声が大きくなっているものです.
隣の客が大きな声で通話していると,鬱陶しいですものね.
でも,問題はそれだけではないのです.

携帯電話は目に見えない電磁波を使って通信を実現しています.つまり
携帯電話を使っているあなたのまわりには電磁界が発生しているのですが,
この電磁界がさまざまな電子機器の誤動作を引き起こす原因となる場合があるのです.
例えば,携帯ゲーム機が少々誤動作しても,大した問題ではありません(?).
でも,心臓ペースメーカ等の医療用電子機器が誤動作したらどうなるでしょうか?
あなたの出した電磁波が,人の命を奪うことになるかもしれないのです.
とはいえ,電磁波は今や生活になくてはならないものです.携帯電話だけではありません.
テレビもラジオも電子レンジも,みんな電磁波を使った便利な生活家電です.
それほど電磁波はわたしたちの生活に密着し,今やなくてはならないものとなっています.
そんな便利な電磁波なのですが,わたしたちはその実体を目でみることができません.
身のまわりの電磁波の存在を,わたしたちはすぐに知ることはできないのです.
だからこそ,慎重に使わなければならないのです.

わたしたちの研究室が取り組んでいる「環境電磁工学」という学問分野は,
人が安心して暮らせる電波環境の構築をめざして,今から30年以上前に日本にもたらされました.
この学問分野は諸外国ではElectromagnetic Compatibility(電磁両立性)と言われており,
その頭文字をとってEMCという愛称で呼ばれています.

電子機器の高度化とともに劣化の一途を辿っている電磁環境を正確に把握し,
その劣化のメカニズムを明らかにし,そして改善を図ること…
それが電子機器に関するEMCの大きな目標といえるでしょう.

わたしたちは,人と社会を取り巻く電磁環境を少しでも改善するために,
目に見えない電磁波を高周波計測技術によって捉えたいのです.
あなたとあなたの大切な人を守るために,そして明るい未来のために.
電磁波と人間とのよい関係を,一緒に考えてみませんか.