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キッチンケミストリー 電子レンジで遊ぼう

 皆さん、電子レンジを毎日使っていますよね。調理やコンビニのお弁当の温めに重宝します。電気電子の学生が集まると、この便利な電子レンジが遊び道具になります。今日は、電気電子の学生3人が、キッチンスタジオに集まり、電子レンジで遊びます。少しだけ化学(ケミストリー)の話もありますが、難しさより、楽しさが一杯です。

 キッチンスタジオには、電子レンジが備えられています。でも、調理用で、遊び用ではありません。そのため、遊び用の電子レンジを持参しました。My電子レンジです。

(本実験は、本来の電子レンジの使い方ではありません。試料の発火、電子レンジの破損等の危険がありますので、家庭では真似をしないで下さい。)

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蛍光灯に明かりを付けよう

 電子レンジはマイクロ(電磁)波を発生させ、それが食品に吸収されることで加熱されます。そのため、電子レンジのことを英語で、マイクロウェーブオーブン(Microwave Oven)と呼びます。さて、このマイクロ波は、食品以外にも吸収されるのです。マイクロ波が蛍光灯に吸収されると、どうなるか実験です。食品を加熱する場合と同じように、円形型の蛍光灯を電子レンジの中に入れます。

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 タイマースイッチを入れます。そうすると、蛍光灯が光りだしました。蛍光灯の管の中には、アルゴンガスと少量の水銀蒸気が入っています。それらが、電子レンジからのマイク波を吸収し、内部で放電が始まります。それによって、蛍光灯が光るのです。

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 光っている様子は、こちらをご覧下さい。
 キッチンケミストリー動画1 bideo

 電子レンジで光らせた後の蛍光灯は、大変熱くなっています。直接手では触れないので、布で蛍光灯をつかみ、取り出します。

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マイクロ波は電波、シャープペンシルの芯はアンテナ?

 マイクロ波というのは、周波数が300メガヘルツから3テラヘルツの電波のことです。携帯電話の通話に使われる電波もマイクロ波の一種です。マイクロ波が電波なら、アンテナで受信することが出来るはずです。今回は、電子レンジのマイクロ波をシャープペンシルの芯で受信することにしました。電子レンジからのマイクロ波の周波数は、2.45ギガヘルツです。マイクロ波は1秒間に3x108メートル進みます。このことから、マイクロ波の波長は、約2センチメートルとなります。

 電波を受信する場合は、電波の波長の倍数の長さのアンテナを使うと受信感度が高くなります。この実験では、波長の0.5倍の長さである6センチメートルのシャープペンシルをアンテナとして使います。

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 この芯を紙に包み、折らないように慎重に電子レンジの中に入れます。

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 電子レンジのスイッチを入れた結果は、この動画を見てください。シャープペンシルの芯がマイクロ波を受信し、マイクロ波のエネルギーで芯が過熱されます。その結果、過熱された芯が、紙に火を付けます。シャープペンシルの長さが適切でないと、このように激しくは火が付きません。

 実験結果の動画は、こちらをどうぞ。
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瀬戸物(セラミック)は温まりません。石は?

 電子レンジで食品を温める場合、マイクロ波は皿に吸収されないので温まりません。皿が熱くなったように感じるのは、食品の熱が皿に伝わったからです。では、石はどうでしょうか?一般的な石は温まりません。でも、鉄を多く含んでいる石(鉄鉱石)は、マイクロ波を吸収し、熱くなるのです。

 今回実験に使うものは、黄鉄鉱という種類の鉄鉱石です。頭に「黄」が付くのは、この石には鉄に加え、硫黄も含まれているためです。硫黄によって、石はところどころ黄色く見えます。この黄鉄鉱は、埼玉県の秩父鉱山で採掘されました。

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 この石を電子レンジに入れ、スイッチを入れます。

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 電子レンジで黄鉄鉱が熱くなったか、熱電対温度計で調べます。黄色の機械がそれです。この温度計は、2種類の金属をくっ付けたとき、そこには電圧が発生し、その電圧は金属の温度で決まる現象(ゼーベック効果)を利用しています。温度を測る部分は、細い2本の金属線の先端をくっ付けただけなので、とても小さいです。そのため、計りたい物の温度を下げずに、正確に温度を測ることが出来ます。

 黄色い測定器から、電線が出ています。その線の先端には2種類の金属がくっ付いた部分があります。そこを黄鉄鉱に触れさせます。黄鉄鉱の温度は、74.9℃です。電子レンジで、黄鉄鉱が温まったのです。

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活性炭は電波を吸収する?

 冷蔵庫の脱臭剤として使われる活性炭。これは内部にたくさんの小さな穴がある(多孔質)の炭素の粒です。冷蔵庫内の匂い成分は、この小さな穴に入り、脱臭されるのです。この活性炭を小さなビーカーに入れ、電子レンジにかけてみます。

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 結果は、活性炭がマイクロ波を吸収し過熱されます。また、加熱された活性炭が燃えています。

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 燃えている様子は、こちらをご覧下さい。
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 燃えた活性炭です。活性炭は備長炭など木炭と同じ仲間です。そのため、燃えた活性炭は、灰となります。

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温まらなくても、温めてはいけません!!

 お弁当を電子レンジで温めたときは、主に食べ物に含まれる水分や油が加熱されます。液体は、何でも温まるかというと、そうではありません。ベンゼン(C6H6)という薬品は、マイクロ波を吸収せず、温まりません。このベンゼン、有機化学、石油化学工業では基本的な原料です。周りにある石油製品の多くはベンゼンの一部が換わった分子構造になっています。実は身近な化学物質なのです。

 水とベンゼンの分子構造を比較して見ましょう。左が水、右がベンゼンです。

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 水の分子記号は、H2Oです。2つの水素原子(H)と1つの酸素原子(O)で構成されています。分子構造は、図のように酸素原子(O)を中心に水素原子(H)が左右対称に繋がっています。でも、一直線に並んでいるのではなく、並びは約105度の角度で曲がっています。この曲がりが、水がマイクロ波を吸収する秘密なのです。もし、水素と酸素原子が一直線に並んでいたら、マイクロ波は吸収されません。そうなると、電子レンジでお弁当を温めることが出来ないのです。これは大変です。これからは、水の分子構造が105度で曲がっていることに感謝し、温かいお弁当を食べましょう。

 ところで、ベンゼンは、炭素原子で出来ている六角形の部分にすべて水素原子が付いた構造です。一つの水素原子に注目すると、その一直線上に対の水素原子があります。すなわち、原子の並びが一直線なのです(点対称)。このような構造の場合、マイクロ波は吸収されません。それは、電子レンジで加熱されないことを示しています。

 早速、ベンゼンが電子レンジで加熱されないか試してみましょう!!と行きたいところですが、この実験は出来ません。

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 実験では、試薬用の高純度のベンゼンを用意しましたが、その中には不住物が含まれています。その不純物は電子レンジからのマイクロ波を吸収し、過熱されます。そして、その熱がベンゼンに伝わり、ベンゼンも温かくなります。加熱されたベンゼンは、蒸発(揮発)し、それを人間が吸い込むと、癌になる危険があります。このような実験は、絶対やめましょう。

「学生のあそび心」初のNG

 いつもは実行あるのみの「学生のあそび心」ですが、きちんとした知識の上での「あそび」です。安全第一で行きましょう。初の「あそび」企画のNGとなりました。

 でも、気を取り直し、皆で記念撮影です。写真を撮ってくれたカメラマンも一緒に撮ります。

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 記念撮影の後、My電子レンジと一緒に3人はキッチンスタジオを後にしました。

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(本実験は、本来の電子レンジの使い方ではありません。試料の発火、電子レンジの破損等の危険がありますので、家庭では真似をしないで下さい。)

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