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第3回 冷蔵庫の消費電力 (2008年4月13日)
2011年7月19日の追加版「冷蔵庫の消費電力2」はコチラ

意外に大きい冷蔵庫の消費電力
4月に入り、新しい生活が始まります。そこで必要になるもののひとつが冷蔵庫。正確には冷凍庫も付いているものがほとんどなので冷凍冷蔵庫と呼ぶべきでしょう。今回は冷凍冷蔵庫の消費電力について解説しましょう。実は冷蔵庫は年間で24時間365日稼働するものなので、家庭の中で占める電力消費量の割合としては、資源エネルギー庁 平成16年度電力需要の概要(平成15年度推定実績)でも、以下のようになっていて、エアコンに次ぎ第2位の16.1%となってます。


品目別家庭用電力消費の比較
出展:資源エネルギー庁 平成16年度電力需要の概要(平成15年度推定実績)

 

小さくても電気を食ってしまう冷蔵庫
「大きい冷蔵庫はその分電気を消費してしまうので、ライフスタイルに合わせて小型なものを選ぼう」という考えで冷蔵庫を選ぶのは、間違った考えになる可能性が高いです。下図は、2008年4月時点での最新機種を中心に省エネルギー性能や環境性能に優れたものばかりを集め、冷蔵庫容量と年間消費電力量をランキングしたものです。このグラフからわかることは、電力消費量は冷蔵庫容量にあまり依存しないということです。この理由としては、標準以上(300リットル以上)の、単価が高い製品に、最新の省エネルギー技術が導入される傾向にあるためです。また、一般にモータやコンプレッサの性能は大型なものの方が効率が高くなりやすいことも挙げられるでしょう。さらに、大型になると比表面積(体積に対する表面積)が小さくなるという性質が働き、冷気が逃げにくくなるという効果も働いていそうです。


冷蔵庫容量と年間消費電力量の関係(2008年4月)

なお、冷蔵庫の年間消費電力量についての表示方法は、平成18年(2006年)5月1日以降変更され、現実的な数値になったため、以前よりも大幅に増える結果となりました。ですので、これ以前に製造された冷蔵庫内にある表示は、現実のよりも少なく数分の1程度になっている可能性があります。あまり当てにならないということです。

次に、年間の電気代に換算したものを示します。1kWh=22円として計算してあります。当然ですが、上記グラフに比例した結果になっています。年間1万円ちょっとというのが平均的な金額となっています。


冷蔵庫容量と年間電気代の関係

大手家電メーカーのH社に限ってみると容量と年間消費電力量の関係(2008年春時点)は、次のようになります。俗に言うマンションサイズ(幅60cm以内、奥行も同程度、高さ180cm程度)のR-X370が450kWh/年最も消費電力が少なくなっています。同社によれば2008年2月1日時点で、定格内容量350〜400Lクラスのノンフロン冷凍冷蔵庫として、業界No.1とのことです。

追記:2008年9月16日にパナソニック(10月1日より松下電器産業から社名変更)から新型冷凍冷蔵庫の発表がありました。NR-F503Tは定格内容積501L以上の国内家庭用ノンフロン冷凍冷蔵庫において年間消費電力量380kWh/年で業界No.1の省エネを実現したそうです。一方、日立も冷凍冷蔵庫?R-SF45YM(定格内容積451L・6ドア)も10月1日に発売を予定しているので、両社の争いが注目されます。

ちょっと悲しいのは、容量が小さくなるとむしろ年間消費電力量は増大してしまうことです。このような選択は避けたいところ。仮に年間で200kWh違うと、電気代で年間4400円分の差となります。なんのために小さい冷蔵庫にしたのかわからなくなります。


H社の冷蔵庫容量と年間電力消費量の関係

参考までに、冷蔵庫容量に対する冷蔵庫サイズ(幅、奥行、高さ)の関係も、せっかくなので示しておきます。容量的にもマンションサイズで365リットル程度のものががんばっています。一方、同じ外形寸法で容量を増やす挑戦として、M社のNR-F412Tは406リットルを確保し、スペック上も消費電力470〜490kWh/年と少なめで健闘しているようです。


H社の冷蔵庫容量と大きさの関係

 

古いものを大事にすれば良いとは限らない冷蔵庫
限られた資源や資金を有効に活用しようとした場合に悩ましいのが、古いものを長く使うか、省エネ性能に優れた新しいものに交換するかです。資源エネルギー庁のパンフレット「日本のエネルギー 2008」より、引用すると冷蔵庫の容量1Lあたりの年間消費電力量は、平均的には下図のように推移しているそうです。この図が本当に正しければ、1995年以前に製造された冷蔵庫は現在よりも4倍程度電力量を消費してしまう可能性があることがわかります。少なくとも1999年の平均レベルでも2倍ほど消費している可能性が高いといえます。


冷蔵庫容量1Lあたりの年間消費電力量(kWh/L)の推移
出展:資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2008」

このような結果は2006年5月の件もあるので、いまいち当てにできないのですが、いちおう数値通りに改善されたとすれば、古い冷蔵庫を使い続けることは、多くの電力量(=エネルギー)を消費してしまい、火力発電所から発生するCO2(炭酸ガス)の排出を増やしてしまうことになります。1996年以前の冷蔵庫を最新機種に買い換えることは、場合によっては電球を蛍光灯に買い換えるくらいの省エネ効果(=電気代が1/5)があるといえそうです。このような効率向上の変化は、冷蔵庫同様にモータとコンプレッサ(というかヒートポンプ)を使うエアコンに見受けられます。

年間消費電力量が500kWh程度の最新型に対して、1996年以前の標準的な冷蔵庫を使用した場合、年間1000〜1500kWh程度を節約することもあり得るわけで、その場合は電気代で、なっ、なんと22000〜33000円/年も違ってきます。もちろん、ケースバイケースなので、これ以上もこれ以下の場合もあるでしょう。ちなみに1000〜1500kWhの節約は、新しいCO2排出係数である0.555kg-CO2/kWhを使用すると、年間で555〜833kgのCO2排出を抑えることに相当します。石油火力発電で電気を作ったとして大雑把に計算すると、石油換算で年間237〜356リットル程度が節約できそうです。もちろん、冷蔵庫を作る際の資材を節約するという観点も当然必要になってきますが、10年以上前の、省エネ対策、環境対策が弱い、古い普通の冷蔵庫は買い換えた方がいいのではないかと考えます。(さすがに、この差は大きすぎるのではないかと違和感を感じます。上図の変化が本当であるかなど、検証が必要そうです。15年以上前に製造された冷蔵庫の、真の実力を調べないとダメかも。)

 

何が省エネルギー技術を向上させたのか?
どうして、こんなにもエネルギー消費を削減できるようになったのでしょうか? その技術について簡単に紹介したいと思います。

1.断熱材の進化
冷蔵庫の冷気が外に漏れないように(厳密には外の熱が冷蔵庫の中に入って来ないように)するために、断熱材として昔は発泡スチロールが使用されていました。かなり断熱性が高いのですが、まだまだということになり、発泡ウレタンなど、より断熱性の高い材料に変化してきました。近年、発泡させる際にフロンガスが使いにくくなったことや、さらに断熱性を高めるために、真空断熱材が開発され、飛躍的に断熱性能が向上しています。そのため、省エネルギー性能が上がってきました。また、熱をもつコンプレッサと温度が低い冷凍室の距離を離したり、冷凍室を冷蔵室でサンドイッチすることで、温度差を少なくして、冷凍庫への熱の進入を減らした真ん中冷凍庫というレイアウトも増えています。

2.モータ、コンプレッサの進化
年々モータの高効率化への要求が高くなり、あらゆる分野のモータ効率はアップしています。同様に、圧縮気体を作るコンプレッサも発達してきました。なお、インバータ制御あるいは日立のようにPAM(Pulse Amplitude Modulaton)制御などを導入することで、エアコン同様に高効率化を目指す例もあります。モータが止まることなく回転するため、消費電力が少なくなるだけでなく、騒音も小さくなるというメリットもあります。ただし、搭載していない機種もありますので、よく調べてみないとわかりません。また、別のアプローチとしてコンプレッサを2台積むといった手法もあるようです。

3.制御部の高効率化
家電製品全般にいえることですが、制御用マイコンの製造プロセス技術の向上や、電子回路、電源部などの低消費電力化が年々進んでいます。

こういった省エネルギー性能の向上に伴って、断熱材やモータ&コンプレッサが占める体積が小さくなってきました。そのため、同じ冷蔵庫の外形寸法であっても、容量が以前よりも増大しているケースがあります。

また、オゾン層を破壊し温室効果が高いことから、フロンガスおよび代替フロンガスを冷媒および断熱材発泡剤に使用しない、ノンフロン冷蔵庫が登場しました。冷媒には炭化水素系のイソブタンが使用されています。冷却性能には問題ないのですが、可燃性があるため、これまでは使用されてきませんでした。そのため、家庭用冷蔵庫では、使用量を100g以下にしています。

各種ガスのオゾン層破壊係数と地球温暖化係数
ガス種類
オゾン層破壊係数
地球温暖化係数
参考
CFC-12
1
10600
フロン:古い冷蔵庫、カーエアコン用(オゾン層破壊係数の基準)
HFC-134a
0
1300
代替フロン:冷蔵庫、カーエアコン用
R600a
0
3
イソブタン:ノンフロン冷蔵庫用
シクロペンタン
0
3
断熱材発泡剤
CO2
0
1
二酸化炭素(地球温暖化係数の基準)

 

パワーやエネルギーの単位について
ここでは、わかりにくい電力と電力量について説明します。英語でいえば、電力はパワーで、電力量はエネルギーに対応します。電力の単位はW(ワット)、電力量の単位は一般にはkWh(キロワットアワー)を使います。ワットという単位は蒸気機関を発明したJames Wattの名前に由来していて、仕事率と呼ばれています。これが、電気業界では電力と呼ばれているのです。ちなみに、機械業界ではエンジン出力をkWで表示しています。James Wattは、エンジンの性能をわかりやすく説明するために、馬何頭分の仕事ができるかをわかりやすく説明するために馬力という単位を作ったのです。馬力にはイギリス馬力とフランス馬力があり、イギリス馬力1HP=745.7Wはフランス馬力1PS=735.5Wとなっています。

「パワー×時間=エネルギー」という関係にあり、1Wが1秒使われると1J(ジュール)というエネルギーになります。また、電気業界では1Wを1時間使ったときのエネルギー量をWhとして扱い、バッテリの放電エネルギーなどの表記に使うことがあります。したがって、1時間は3600秒ありますので、1Wh=3600Jとなります。また、電力会社かたの電気代はkWhという単位をもとに計算されています。基本料金と従量制料金などで決まるため、単純ではありませんが、日本では1kWhあたり22円として扱うのが一般的です。

なお、熱量の単位であるcalもエネルギーの単位です。1calとは、1gの水の温度を1℃上昇させるのに必要なエネルギーです。1cal=4.2Jとして換算できます。

 

参考文献
1) 平成18年5月1日以降に製造される家庭用電気冷蔵庫の年間消費電力量の表示値が変更されます
2) 「日本のエネルギー 2008」
3) 2007年冬の冷凍冷蔵庫の省エネカタログ「冷凍冷蔵庫」
4) 「地球温暖化対策の推進に関する法律施行令の一部を改正する政令」について

お断り:上記データは2008年4月時点のものですので、新製品等が登場することで値などは変化します。また、東海大学木村研究室が省エネルギーの観点から見たものであり、使い勝手や、デザイン、便利機能などはほとんど考慮されていません。実際の購入の際には、ご自身で総合的に判断されることをお勧めします。なお、冷蔵庫の斡旋を目的としていませんので、個別のお問い合わせにはお応えできない場合もあります。ご容赦ください。